2005年08月19日

はじめての親友。

今回は私の所有するスピマス以外の時計に関するお話をひとつ。
いつもとはちょっと趣向を変えて書いてみました(^^)




画像の時計、SEIKOの5アクタスっていうブルーのグラデーションダイアルが
美しい1970年代の時計です。
現在も販売し続けられているSEIKO 5(ファイブ)の1バリエーションで、
ファイブのラインナップからは既に消えているけれど、
当時1970年代にはカラフルに染められたグラデーションダイアルや、
独特のダイヤカットされたクリスタルが特長で、
廉価なファイブシリーズの中でも少しラグジュアリーに振ったモデルだった。

1976年頃の遥か昔(^^;、僕が小学6年生だった頃、
僕には同じクラスに「やっちゃん」と呼んでいた親友がいた。
多分、一般的にも親友と呼べる様な付き合いが出来るのは、
小学生でも高学年になってからだと思う。
僕にとっても今思い返すと「やっちゃん」が初めて親友と呼べる間柄の
クラスメートだったなー・・・。

「やっちゃん」のうちは小さな電器屋さんを営んでいた。
商店街とは全く縁の無い、駅からも遥か遠くの客足も無いようなところに
お店を構えていた。子供ながらに僕は
「大丈夫なのかなー、売れるのかなー」
と心配したこともあったほどの寂れた立地のお店だった。

「やっちゃん」とはお互いに釣りが好きで、ふたりで勝手に「釣りきちクラブ」と
名乗って毎週日曜日になると、近くの岸壁で朝から晩まで糸を垂れていた。
その「やっちゃん」の自慢の腕時計が、グリーンのグラデーションダイアルに
ダイアカットのクリスタルがキラキラ輝くSEIKO5アクタスだった。
それは「やっちゃん」がお父さんからお下がりで貰った自慢の宝物だった。
その時の僕はと言えば、やはり親父からのお下がりだったけれど
オジン臭いシチズンのセブンスターという腕時計で、ベゼルがゴツク、
金メッキがところどころ剥げて何とも冴えない物をはめていた。
僕は「やっちゃん」の宝石の様にキラキラ輝く5アクタスが
羨ましくてたまらなかった。

そんな「やっちゃん」が2学期の秋から急に学校へ来なくなった。
「やっちゃん」のうちの電器屋さんも、このひと月間ずっと
シャッターが閉まっている。
電器屋さんと隣のうちのブロック塀との間にいつも置かれている
「やっちゃん」の自転車が、埃と雨でグショグショになっていた。
それを見て僕は「やっちゃん」がここにいないのを実感した。
「やっちゃん、どこへ行ってしまったんだろー」
と子供ながらに本当に心配だったのと、
いつも一緒にいた親友がいなくなった事でとても寂しかったのを憶えている。

12月に入ってクラスの担任の先生からみんなに
「やっちゃんはお父さんのお仕事の都合で引越しをしました」
と説明があった。
みんなは「やっちゃん」が学校へ来なくなってから2ヶ月近くも経つ事で、
もうその存在を忘れ始めていたのか「ふーん」とあまり感心が無い様だった。
でも僕は数日前にお袋が同じクラスの父兄と電話で話しているのを
盗み聞きして既に知っていた。
「やっちゃん」のうちが借金で夜逃げした事を。
それ以来「やっちゃん」の行方は知らないし音沙汰も無い。
それが「さよなら」のひと言も言えなかった初めての親友「やっちゃん」との別れだった。



今、僕の左腕にはめられた5アクタスのキラキラと輝くクリスタルの光の中に、
あの頃の自慢げに左腕を突き出した「やっちゃん」の5アクタスと懐かしい笑顔が
浮かび上がってくる。
               「さよなら、やっちゃん・・・」。


ojarumaru99 at 20:25│TrackBack(0)clip!その他 

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